このごろのこと

5班 依田 功

「自転車」

 緊急事態宣言が解除されて1週間後の5月31日に出かけるため、自転車に乗ろうとした。するとなんと前かごはクモの巣だらけになっている。白い細い糸が縦横に密集している。

 自転車を利用するようになって50年余、初めのころは交通手段として岩槻駅まで、東岩槻駅が開業してからも駅まで乗って電車に乗り継いでいた。

 退職してからは移動手段として自転車が中心である。6年前に2週間入院、その後しばらく自転車に乗れない時間があったが、前かごには変化がなかった。

 考えてみると3月から3か月間、自転車を使って外出することがなかった。この間、ほとんど家に閉じこもっていたのは、人生初めての出来事である。

「待合室」

 骨密度の測定のため岩槻中央病院に行った。待合室でしばらく待っていると、「ヨダさ~ん」とよばれたので受付に行った。するとすぐ、また「ヨダさ~ん」と放送が入った。2度も呼ばれたと思っていた。すると処置室での採血の時、なんと私の次の女性が同姓だった。看護師さんたちは、「同じ家族の方かと思った」と話していた。それからレントゲンを撮るために2階の受付に行くと、先ほどの方ともうひとりの「ヨダさん」がいて、3人の同姓の人が一つ分ずつあけて置いてある椅子にすわった。レントゲン室のスタッフの中年の二人の男性が「3人も同じ姓の人が揃うのは珍しいね」という。それもあって慎重を期してか、レントゲン室に入る時はフルネームで呼んで確認していた。

 ヨダ姓は、めずらしいので二人の方に「どちらのご出身ですか」などと質問したかったが、相手の方は女性であったし、何よりマスク姿での会話はやめた方がいいかなと思った。

「喜寿」

 間もなく喜寿を迎える。先日、退職してから所属している会より、ラジオ付きの懐中電灯を記念にいただいた。このごろ地震や豪雨が多いので、災害時に重宝するかなと思っている。

 それにしても長く生きてきたものだ。が、人生で一度だけ生きるのが嫌になったことがある。たしか小学校3年生の時だ。兄嫁の家に居候していた秋だった。一人で家の裏の空き地で地面にしゃがんで、小さい梨の実がなる木から落ちてきた毛虫をじっと眺めていた。毛虫は、そばにあった一本の藁を上っていた。「わっ 小さい虫もがんばっている。おれもがんばらなくちゃ」と思った。

 あれからほぼ67年がたつ。これからも与えられた人生をありのままに受け入れて日々を過ごしていきたいと思っている。

 手洗いをこまめにするとか、3つの「密」を避けるなどの新しい生活スタイルで過ごすようになって、かれこれ100日が過ぎました。冬から春が過ぎ、おととい梅雨を迎えました。季節は予め決められているかのように変化していきます。が、コロナウイルスの終息の見通しが未だ持てず、早く何とかならないのかなと思うこともあります。しかし、そのうち「きっと皆さんに会える」と確信しています。その日を楽しみにしています。

           

                 令和2年6月13日      依田 功